BIMI認証の事前準備の重要性。ブランドロゴ表示に1年かかった話

アソビュー株式会社 @tkyshat です。
BIMIの導入に向けた私自身の経験をもとに、メールにロゴが表示されるまでに技術的観点というよりも時間的観点からハマったポイントと、回避策について書いていきます。

はじめに

この記事は、以下の方々を対象にしています :

  • BIMIについてかいつまんで知りたい方
  • BIMI設定のハマりポイントについて知りたい方
  • BIMI設定完了までにどれくらい時間がかかるか知りたい方

BIMIとは?

BIMIは、組織が送信するメールにブランドロゴを付加し、そのロゴが受信者のメールクライアントに表示される仕組みです。
BIMIをサポートするメールクライアントでは、受信者のメールボックスに企業のロゴが表示されます。
そのため、フィッシング詐欺の防止やブランドの信頼性向上に寄与します。

BIMI設定有無によるGmailでのUI差分

アソビューでは会員登録やレジャーの予約購入時のメール以外にもメールマガジンなど様々な種類のメールを送っています。
そのためユーザーの皆様に安心してメールをご確認いただけるよう、BIMIの導入を実施しました。

今回ハマったポイント

今回、BIMIの具体的な設定手順については割愛します。詳細な設定方法については、Googleが提供しているこちらのガイドをご参照ください。

ざっくり説明すると、下記5ステップがあります。

  1. ブランドのロゴを商標登録する
  2. DMARCを設定し、適切なポリシーに設定する
  3. 認証局よりVMC(Verified Mark Certificate)を取得
  4. ロゴとVMCを公開する
  5. BIMIレコードをDNSに登録

アソビューでは認証局にEntrustを利用しVMCを取得しました。
Entrustは各種証明書を発行している企業になり、デジタルセキュリティと認証の分野で広く知られている企業です。

Entrustの場合、ロゴやVMCをEntrustのサーバーでホスティングしてもらえるため、ロゴやVMCの公開は不要です。
そのため1と2のステップさえクリアできれば、あとは5のBIMIレコードをDNSに登録するだけの簡単な作業のはずでした。
なぜ、この作業に約1年も費やすことになったのでしょうか。

ブランドのロゴを商標登録する

BIMIで使用するブランドロゴは、VMCを発行するために商標登録されている必要があります。
商標登録には複数のステップがあります。最速で通った場合、以下の各ステップを経て最終的に登録されます。

  1. 係属-出願-審査待ち: 商標申請が受理され、審査が開始されるまでの段階。
  2. 係属-出願-審査中: 商標審査が進行中の段階。
  3. 係属-出願-異議申立のための公告: 商標登録が進む中で異議申立の機会が与えられる段階。
  4. 存続-登録-異議申立のための公告: 商標が登録され、異議申立のための公告期間中。
  5. 存続-登録-継続: 異議がなければ、商標が正式に登録される段階。

「存続-登録-異議申立のための公告」のステップになった時点で、特許庁より商標登録証が交付されます。
アソビューではこのステップになるまでに9ヶ月待ちました。
ようやく「商標登録が完了した!」と思いVMCの認証局に申請しましたが、商標登録証まで交付されているにも関わらず弾かれました。

「存続-登録-異議申立のための公告」の期間中は異議申し立てが可能であり、その結果次第で商標が取り消される可能性があります。
そのため、VMCの認証局からはこの段階での申請は受け付けてもらえません。
こちらのステップは2ヶ月と決まっているため、商標登録証交付よりさらに2ヶ月待つ必要があります。

この商標登録のプロセスは通常、6か月から1年程度かかります。アソビューでもこのプロセスに約11ヶ月を費やしました。

DMARCを設定し、適切なポリシーに設定する

BIMI認証を導入するためには、DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting & Conformance)を適切に設定することが必須です。
DMARCは、ドメインを使用して送信されるメールが正当なものであることを確認するためのプロトコルであり、メールのフィッシング詐欺を防止する重要な役割を果たします。

BIMI認証をサポートするには、DMARCのポリシーを「quarantine」または「reject」に設定し、すべてのメールにDMARCポリシーが適用されるように「pct」値を100に設定する必要があります。

このプロセスは慎重に進める必要があり、急いで設定を変更するとメールの配信に影響が出る可能性があります。
アソビューの場合、DMARCの設定を段階的に行い、最初は「none」ポリシーでレポートを収集しながら、pctパラメータを調整しながら段階的に「quarantine」ポリシーに移行し、実務にできる限り影響しないようにしたため。約1ヶ月かかりました。

DMARCの設定方法については、以下のリンクを参考にしてください。 tech.asoview.co.jp

ハマりポイントの回避策

DMARCの設定とVMCの取得のみであれば、1-2ヶ月で完了できますが、 商標登録がされていないロゴを利用する場合、最低でも6ヶ月は見ておいたほうがよいです。

どうしても急ぐ場合、商標登録を早めるための方法として、以下の2つの選択肢があります。

早期審査の申請

緊急性がある場合、早期審査の申請を行うことで、通常よりも早く商標登録を完了することが可能です。
ただし、特定の条件を満たす必要があり、全てのケースで適用されるわけではありませんが、可能な場合は検討する価値があると思います。

海外の登録機関を利用

VMCに利用する商標は必ずしも日本の特許庁で取得する必要はありません。 VMC用に海外の登録機関で商標を登録することも、手続きを迅速に進める方法の一つです 海外の商標登録機関では、例えば米国特許商標庁や欧州連合知的財産庁などがあり、
日本国内よりも早く商標登録を完了できる場合があります。

まとめ

BIMI認証は、ブランドの信頼性を向上させ、フィッシング詐欺を防ぐための強力な手段ですが、その導入には十分な準備が必要です。
特に、商標登録とDMARC設定のプロセスには時間がかかるため、早めに取り組むことが成功の鍵となります。

最後に

アソビューは成長中の組織ですので整っていないところも沢山ありますが、メンバーとして・組織として一緒に成長していきたい方を大募集しています!
カジュアル面談もありますので、少しでも興味があればお気軽にご応募いただければと思います。

www.asoview.co.jp