Sentryで大量のエラー通知を監視するために、カスタムフィルタリングを実装した話

はじめに

こんにちは、アソビューでフロントエンドエンジニアをしている村井です。 皆さんは、Sentryを使っていてエラーにノイズが多くて困ったことはありませんか?

私のチームでも、Sentryを導入した際に同様の課題に直面しました。本記事では、このエラー通知のノイズを削減した方法とその効果について解説します。

Sentryを利用している方や、エラー監視の効率化を図りたい方の参考になれば幸いです。

カスタムフィルタリングが必要になった背景と課題

Sentryを導入した当初、私のチームでは想定以上のエラー通知が発生し、その多くが実際の問題解決には直結しないものでした。具体的には、以下のようなケースが頻発していました。

  • ユーザーの操作による意図的なエラー:フォームのバリデーションエラーや、アクセス権限がないページへの遷移など、ユーザーの操作によって発生するエラー
  • 特定のAPIから頻発するエラー:サービスの仕様上特定のAPIから特定のステータスコードが返されるエラー

これらのエラーはサービスの正常な動作であり、開発者の対応が不要なものですが、大量に報告されることで本当に対応が必要な重要なエラーが埋もれ、見逃すリスクが高まっていました。

Sentryの既存フィルタリング機能とその限界

Sentryには、以下のような公式のフィルタリング機能があります。

  • Inbound Filters:一般的なエラー(例:ブラウザ固有のエラー、特定のHTTPステータスコード)を除外する機能。
  • Data Scrubbing:個人情報や機密データをマスキングまたは削除する機能。

これらの機能には以下の課題があります。

  • 柔軟性の不足:特定のAPIパスや、カスタムのエラーコード、メッセージに基づいたフィルタリングが困難です。
  • メンテナンス性:フィルタリング条件が増えると設定が複雑になり、管理が難しくなります。

そのため、カスタムロジックを適用できるbeforeSendフックを使用することにしました。

beforeSendを用いたカスタムフィルタリングの実装

beforeSendフックを使用することで、エラーがキャプチャされた際に任意の処理を挟み、特定の条件下でエラーをフィルタリングすることが可能です。 以下に実際の実装例を示します。

import * as Sentry from '@sentry/browser';
import type { AxiosError } from 'axios';

// 無視したい条件のリストを定義
const ignoreConditions = [
  { path: '/api/v1/mockApi01', statuses: [409] },
  { path: '/api/v1/mockApi02', statuses: [400, 401] },
];

// 指定したURLパスとステータスコードが無視条件に合致するかチェック
const shouldIgnore = (url: string, status: number): boolean =>
  ignoreConditions.some(
    (condition) =>
      url.includes(condition.path) && condition.statuses.includes(status)
  );

Sentry.init({
  dsn: 'YOUR_SENTRY_DSN',
  beforeSend(event, hint) {
    const exception = hint.originalException as AxiosError | undefined;
    if (!exception || !exception.response) return event;

    const url = exception.response.config.url ?? '';
    const status = exception.response.status ?? 0;

    if (shouldIgnore(url, status)) return null;

    return event;
  },
});

フィルタリングの流れ

  1. エラーが発生し、SentryのbeforeSendフックが呼び出される。
  2. 条件に一致するかをチェックする。
  3. 一致する場合はnullを返し、Sentryにエラーを送信しない。一致しない場合はeventをそのまま返し、エラーを送信する。

カスタムフィルタリングの効果とまとめ

カスタムフィルタリングを実装した結果、以下の効果が得られました。

  • 不要なエラー通知が削減され、チームが注力すべき重要なエラーに集中できるようになりました。
  • ノイズが減ったことで、エラーの分析と対応にかかる時間が短縮されました。

今後もフィルタリング条件の拡充などを検討し、さらなる効率化を図っていきたいと考えています。

最後に

アソビューではより良いプロダクトを世の中に届けられるよう共に挑戦していくエンジニアを募集しています。カジュアル面談も実施していますので お気軽にエントリーしていただければと思います。

www.asoview.co.jp