アソビュー! Advent Calendar 2024の2日目(裏面)です。
アソビュー株式会社でQAエンジニアをしております鐘撞(かねつき)です。
2023年7月にジョインし、現在は販売管理システムのQA業務を担当しております。
これまでにテスト仕様書作成業務を進める中で感じた課題、そしてそれに対する改善策およびその結果について紹介したいと思います。
アソビューの販売管理システムとは?
販売管理とは、アソビューで販売している電子チケットやアクティビティ予約の決済額や売上(手数料)の集計を行い、チケット施設やアクティビティ施設へ提出する帳票を発行して、入出金管理を行うものです。
アソビューの販売管理システムについて詳しいことは、以下の記事も参考にして下さい。
https://tech.asoview.co.jp/entry/2022/08/03/135204
テスト仕様書を作成する際に発生していた課題
課題
テスト仕様書には以下のような課題がありました。
- テスト仕様書のフォーマットが定まっていない
- テスト観点が網羅されていない
テスト仕様書のフォーマットが定まっていない
これまで、販売管理のテスト仕様書を作成する際には、ベースとなる仕様書やフォーマットが定められていなかったため、毎回ゼロから仕様書を作成していました。
仕様書のフォーマットや内容に統一されたルールがないため、毎回ばらつきが生じていました。
その結果、過去の仕様書を参照しようとしても統一性が欠けていて活用しづらく、同じ作業を繰り返すことになってしまいました。
テスト観点が網羅されていない
また、既存のテスト仕様書を利用しようとしても、比較的簡素な形式で作成されており、テスト観点も記載されていない状態でした。
新たにテスト仕様書を作成するにあたって、テスト観点の網羅性が欠ける状態では、プロダクト全体の品質へ悪影響を及ぼす可能性があります。
これにより、重要な機能や仕様に対するテストが不足してリリース後に不具合が発覚する可能性もあります。
またテスト観点が漏れていると、テストケースのレビュー時や実施段階で追加のテストケースを設計する必要があり、その結果、事前に想定したテスト工数が増加することになり、スケジュールの遅延や安定したテストへの悪影響が出てしまいます。
これらのことから私は、テスト仕様書を作成する前には、あらためてテスト観点の洗い出しとテスト仕様書のフォーマットの見直しが必要であると思いました。
実施した改善案
実施した改善案はおおまかに以下の2つを実施しました。
- テスト観点の網羅性をあげる
- テスト仕様書のフォーマットを見直す
テスト観点の網羅性をあげる
テスト観点漏れを防ぐために、担当プロダクトの販売管理機能とテスト因子を組み合わせたテストスコープ表を作成し、それを既存のテスト仕様書と照らし合わせました。
その結果、追加すべきテスト観点が明確になり、既存のテストに不足していた観点を特定することができました。
これにより、重要な機能は網羅することが確認でき、さらに細かな部分のテスト観点を見つける効果も得られました。
この取り組みにより、テストの網羅性が向上しました。
テスト仕様書のフォーマットを見直す
テスト仕様書は、あらかじめQAチーム内で策定した「受け入れ基準」をもとに作成しました。
受け入れ基準は、主に開発との効率的なコミュニケーション、テストの効率化を目的に作成しており、販売管理の受け入れ基準は、テストシナリオを基準に置いたテストケースと、個々の機能にフォーカスしたテストケースの2つに大別しています。
このテストケースを基にテスト仕様書を作成することにしました。
受け入れ基準のサンプル(図1)です。
この受け入れ基準を作成したことで、開発メンバーとの認識のズレがなくなり、明確な期待値を設定できました。
また、受け入れ基準をもとにテスト仕様書を作成をすることで、ゼロから作成する必要がなくなり、作業の負担が大幅に軽減されました。
また、期待される動作や結果が明記され、レビューやテストが効率的に進められるようになりました。
受け入れ基準の作成は機能横断的に実施しており、販売管理でも試験的に導入してみたところ、上記のような効果が得られました。
受け入れ基準で作成したテスト観点を仕様書にも記載することで、テストの目的が明確になりました。
これにより、各テストケースがどの目的に基づいて設計されているのかを簡単に把握できるようになりました。
テスト仕様書のサンプル(図2)です。
実施した結果
- テスト観点の記載により、レビューや実施時の効率が向上し、品質の高いテスト仕様書を作成することができた
- テスト観点を記載した仕様書があることで、過去のテスト観点を参考にでき、仕様書作成の時間と労力が削減できた
- 過去に検出した不具合の情報や手順の注意点を記載していたりするので、それを活かすことで再発防止にもつながった
- 検討された観点を再利用することで、重要なテストケースを漏らす可能性が減り、テストの品質を維持できるようになった
- 観点ごとに整理された仕様書を利用することで、新メンバーがジョインした際にも効率的にテストの背景や意図が把握できるようになった
さいごに
今回は、取り組んできたテスト仕様書の改善をご紹介しました。
この取り組みを通じて仕様書の品質向上に向けた具体的な成果を得ることができました。
テストの改善だけでなく、QA業務全般にも改善が必要な領域がまだあると思っています。
今後も、課題解決のためにプロダクトのメンバーと連携し、効果的な改善を目指していきます。