「技術広報って、何のためにやるんだっけ?」― 拡大期のチームでインセプションデッキをやってみた

はじめに

こんにちは!アソビュー株式会社で技術広報責任者もやってます!PdMのやまうち(@mauchi0106)です。

いきなりですが、ひとつ質問させてください。

「あなたのチームは、なぜそこにいるのか、メンバー全員で同じ言葉で答えられますか?」

ぼくは、この問いに最初は即答できませんでした。

アソビューでは、技術広報の専任チームは設けておらず、プロダクト組織のメンバーの中で技術広報の役割を担うメンバーが集まり、「チーム」としてその取り組みを推進しています。

組織が拡大フェーズに入り、ちょうど私がその責任者に着任したタイミングでもあったため、改めてチーム全員で「なぜ私たちはここにいるのか」という原点を揃え直すことにしました。 そして、アジャイルサムライのインセプションデッキを使ってチーム全員でキックオフを行い、存在意義を言語化してみました。

今回は、そのキックオフで行ったことと、学びを記事にしてみました。

「立ち上げ・拡大フェーズに直面しているチーム」や、「他社の技術広報・DevRelがどんなことを考えているのか興味がある方」のヒントになれば嬉しいです。


背景

組織拡大期に入った技術広報チーム

2026年初旬、アソビューのプロダクト組織の拡大に伴い、技術広報チームも関わるメンバーや役割が広がり、活動の幅が一段と拡張するフェーズに入りました。

これまでの活動は、各メンバーの経験や個人の判断に委ねられている部分が多くありました。しかし、今後チームを拡大していく上では、そうした属人化していた役割や前提を一度棚卸しし、全員が同じ目線で動ける「共通言語」を作る必要がありました。

そして何より、「技術広報って、何のためにやるんだっけ?」という問いに対する答えが、メンバー間で微妙に違っていました。もちろんそれぞれの答えは間違っていないし、どれも大切なこと。だからこそ、一度ちゃんと並べて目線を合わせる必要があると感じていました。

揃えたかった3つのこと

このキックオフで揃えたかったのは、次の3つです。

  • ビジョン:技術広報として何を目指すか
  • 価値観:何を大事な軸とするのか
  • 役割:誰がどこを担うのか

なぜ「ただのMTG」じゃダメだったのか

情報共有やタスク整理を目的とした通常のMTGでは、根っこの「価値観」や「ビジョン」までは揃わないという感覚がありました。前提から言葉にして、メンバー同士で背景や経験を交換しながら積み上げていく、そういうワーク形式の場が必要だと判断しました。


インセプションデッキを選んだ理由

インセプションデッキは、書籍『アジャイルサムライ』で紹介されている、プロジェクトの開始時に「前提」を揃えるためのワークセットです。10の問いに答えていくことで、チームのビジョン・価値観・トレードオフ・関係者像を一気に可視化できます。

本来は「新規プロジェクト」向けのフレームですが、今回は 「拡大期に入った既存チームの目線揃え」 として応用してみました。

選んだ理由はシンプルで、

  • 「ビジョン・価値観・役割」を一度のワークで横断的に扱える
  • 抽象的な議論ではなく、各ワークが具体的なアウトプットを伴う
  • 既にチームメンバーが書籍を読んでいて、共通のフレームワークとして扱える

という3点が、今回揃えたかったことと噛み合っていました。

当日アジェンダ

13:00〜18:00 の半日、メンバー全員が顔を合わせて行いました。アジェンダはざっくり以下の通りです。

  • ワーク1:我々はなぜここにいるのか
  • ワーク2:夜も眠れない問題
  • ワーク3:トレードオフスライダー
  • ワーク4:ご近所さんを探せ
  • ワーク5:エレベーターピッチ「私の思う技術広報とは?」

当日レポート

我々はなぜここにいるのか

最初に、各自が「なぜ自分は技術広報をやるのか」を言葉にしていきました。出てきたのは、たとえばこんな声です。

  • 自分自身の市場価値を上げたい
  • アソビューのプロダクト組織の認知度・魅力を高めたい
  • 日本のプロダクトコミュニティに何か恩送りをしたい
  • 社内プロダクトメンバーのキャリアサポートや、一緒に働く仲間集めをしたい
  • そもそも「エンジニアという職業」の地位を底上げしたい

それぞれの動機は、社外向けと社内向けの2軸で整理できることに気づきました。

そして議論を重ねていく中で、コンセプトは「アソビューのプロダクト組織って楽しそうだな、と思ってもらう」というところに収束していきました。

ここでは、「内側が楽しくない状態で、外側だけキラキラ見せようとする」のではなく、まず内部に楽しさが満ちて、それが外部に染み出していくという流れこそが本質だ、という共通認識ができました。

夜も眠れない問題

次は、各自が技術広報を続けていく上で抱えている不安の洗い出しです。

書き出してみると、想像以上にあちこちから出てきました。

  • 兼務が増えて、技術広報に割ける時間が減らないか
  • アウトカム(成果)が定量化しづらく、価値が見えなくなっていかないか
  • メンバーの離脱で、活動が止まらないか
  • 一部メンバーだけが熱量を持ち、他メンバーとの温度差が広がらないか
  • 価値観が浸透しないまま発信して、社内外で炎上しないか
  • そもそもエンジニアが疲れていて、発信する余裕がなくならないか

書き出したものを並べてみると、根っこには「アウトカムが定量化しづらい」「役割認識の差」という、技術広報という活動の特性に根ざした不安があることが見えてきました。

このワークの良かったところは、「不安を共有していい」という空気が一気にできたことです。普段は口にしにくい「正直しんどいかも」や「これって大丈夫なのかな」という感覚を、お互いが持っていると知れたのは大きかったです。

トレードオフスライダー

「品質・頻度・コスト」のうち、何を優先するかを決めます。

ここでいちばん盛り上がったのが、「品質 vs 頻度」 の論争でした。

  • 頻度優先派:量をこなさないと質は上がらない。まずは出していこう。
  • 品質優先派:認知を取れないものは発信しても無駄。中途半端なアウトプットは逆にブランドを毀損する。

どちらの言い分にも納得感があり、簡単に着地できる議論ではありませんでした。最終的にトレードオフとして何を取るかを考えたときには、「品質を優先する」 という結論に落ち着きました。

決め切ることが目的ではなくて、「迷ったときに何を優先するチームなのか」を一度言語化することができたのが大きなポイントだったと思います。

ご近所さんを探せ

技術広報に関わる「ご近所さん」、つまりステークホルダーの洗い出しです。

  • EM、PdM、デザイナー
  • 採用チーム、人事
  • 経営層
  • 外部メディア、コミュニティ
  • 採用候補者の方々
  • 社内の他チームのエンジニア

メンバー全員と「こんな人たちと関わっているよね」を可視化して共通認識化することができました。困ったときに立ち返れる「マップ」を持てるようになったと思います。

エレベーターピッチ「私の思う技術広報とは?」

1日の議論を踏まえて、最後に各自が「自分にとっての技術広報」を1〜2行のピッチに書き起こしました。

メンバーから出てきたピッチを、いくつか紹介します。

「『エンジニアって楽しい!』を自ら体現し、それを認知してもらうことで『楽しい』の輪を広げる活動ができる組織」

「認め合う文化を醸成し、プロダクト組織のバイブスを上げる。そんな素敵な取り組みを社外にも広める。結果、みんなをハッピーにするチーム」

「発信者と受取側を繋げ、お互いwin-winとなるような環境を作る活動」

「社内外への技術発信だけでなく、社内のプロダクト組織を活性化し、メンバーが楽しみながら胸を張れるプロダクト組織づくりを担うチーム」

「アソビューで働く人もアソビューで働いてない人も、アソビューの組織をイケてると思わせること」

並べてみると、不思議と共通のキーワードが浮かび上がってきました。

「楽しい」「認知」「組織の活性化」「つなぐ」

これらの言葉が、「技術広報って、何のためにやるんだっけ?」を言語化するためのキーワードになります。


やってみて見えたこと

ワークを通して、技術広報は、単純に組織の技術を社外に伝えることではなく、モメンタムの醸成を行い組織を活性化することである、気づけたのが大きな収穫でした。

  • 組織づくりの核に「楽しい」を据えることの強さ
  • 一部の人だけではなく、組織全体で技術広報を行う意図をすり合わせ、みんなでムーブメントを作ることの重要性
  • 内側が楽しい → 外側にも染み出す、という順序の重要性

「ただ技術発信を行う」のではなく、「楽しい組織であるからこそ、自然と発信したくなるものが生まれる」。この順序の感覚を、チーム全員でつかめたことが、このキックオフ最大の成果だと感じています。


まとめ

1日のワークを経て、後日改めて整理した結果、アソビュー技術広報の「技術広報って、何のためにやるんだっけ?」は、次の3つの柱に着地しました。

  • 醸成:相互理解とリスペクトを育み、胸を張れる組織文化をつくる。
  • 発信:醸成された熱量を社外へ発信する。
  • 共鳴:コミュニティに貢献するとともに、「アソビューって楽しそう」と感じるファンを増やす。

そしてこの3つは、独立したアクションではなく 「醸成 → 発信 → 共鳴 → 醸成」 と循環する構造として捉えています。

  • 内側で熱量が育つ(醸成)から、外に出すべきものが生まれる
  • 外で受け取られた熱量が、コミュニティとの接続を生む(発信 → 共鳴
  • 共鳴が、また内側の文化を太らせていく(共鳴 → 醸成

技術広報は、「何をもって成功か」が定量化しづらい活動です。実現したい世界観は複数あって、それらが複雑に絡み合った先に、ようやく「良いこと」が起きる。だからこそ、こうしてチームで言葉を揃え、循環の構造として持っておくことが、迷ったときの拠り所になると思っています!

さいごに

もしこの記事を読んで、「うちのチームでも似たことを考えている」「DevRelや技術広報まわりで一度話してみたい」と感じていただけた方がいらっしゃれば、ぜひ気軽にXなど(@mauchi0106)で私まで声をかけてください。協働や対話のきっかけが生まれるのを楽しみにしています!

また、アソビューでは、「生きるに、遊びを。」を実現するためのより良いプロダクトを世の中に届けられるよう、共に挑戦していくエンジニアを募集しています。 共に、醸成・発信・共鳴のサイクルを回していきましょう!

カジュアル面談のご希望も随時お受けしておりますので、お気軽にエントリーください!お待ちしております。

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