キャリア不確実性から生じる漠然とした不安の克服:2つの理論に基づくアプローチ

これは アソビュー!Advent Calendar 2023のB面 21日目です。 🎄 今年のアドベントカレンダーは2面公開なので、ぜひそちらも御覧ください。

エンジニアリングマネージャーの服部です。
昨今の生成AI登場に伴うエンジニア不要論によってキャリアクライシスに陥ったり、キャリアに対するどうしようもない不安に駆られてしまう人は少なくないのではないでしょうか。
この悩みや不安をネガティブ・ケイパビリティと計画的偶発性理論の観点から手放せるようになった話をします。

各理論について

計画的偶発性理論

計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)は、心理学者のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した理論です。 ビジネスパーソンとして成功した人のキャリアを調査したところ、ターニングポイントの8割が本人の予想しない偶然の出来事によるものだった、ということが理論提唱のきっかけになっています。

この理論の中では下記を重要視しています。

  1. 予期せぬ出来事や機会に対して柔軟かつ開かれた態度を持つこと
  2. 偶然の出来事を単に経験するだけでなく、それを積極的に活用し、キャリアの発展に結び付けること
  3. 好奇心を持って新しい経験や学びに取り組むこと、挑戦に直面しても持続性を持って乗り越えること、そして状況の変化に柔軟に対応する能力
  4. 自ら積極的に行動し、新しい機会を追求することで、偶然の出来事がもたらす可能性を最大限に活かすこと

参考文献 amzn.asia

ネガティブ・ケイパビリティ

人間の脳は分からないものが出現すると、とにかく分かろうとします。今までの知識や世にあるフレームワークを駆使して無理やり型にはめようとするくらい、分からないということに対して不安に駆られます。 ネガティブ・ケイパビリティは、分からないものを無理に分かろうとせず、不明確な状態のままで耐え抜く力です。
これだけ読むと問題を後回しにしているように見えますが、不確実性と曖昧さを受け入れ、急いで問題解決せず仮説検証を繰り返すことで、場当たり的な解決ではなく真の問題解決に繋げていきます。
シェイクスピアの作品は、倫理的な議論を引き起こすような開かれた結末を持っており、明確な解答や道徳的教訓を提示しないことが多いです。このような曖昧さは、ネガティブ・ケイパビリティの重要な側面であり、複雑な人間の状況や感情を深く掘り下げることを可能にしています。
そのため、ネガティブ・ケイパビリティを世界で初めて言葉として表現したジョン・キーツは、シェイクスピアを最高の例としてあげています。
個人的には週刊少年ジャンプの漫画HUNTERxHUNTERのキメラアント編もそういった側面があるため、ネガティブ・ケイパビリティの入門としておすすめしています。

参考文献 amzn.asia

自身の経験

私自身エンジニアリングマネージャーになり、ピープルマネジメントやプロジェクトマネジメントに時間を割くことが多くなった結果、新しい技術へのキャッチアップ力やエンジニアリング技術自体の低下に悩み、キャリアに対する漠然とした不安を持つようになりました。GitHubの弊社組織内でのcontributionもエンジニアとしてコードを書いていた2020年はcommitにかなりの比重が置かれていますが、エンジニアリングマネージャーになって3年経った2023年ではほぼreviewに振り切っています。

2020年と2023年のGitHub Contributionの比較

また、自分自身のキャリアを明確に描くことをしておらず、今後のキャリアやどういうことをやりたいのか。という自分の話をするのが苦手でした。そのためフォアキャスティング的な考え方ができないことに対して、ストレスを抱えていました。

計画的偶発性理論の適用

漠然と悩んでいる時にネガティブ・ケイパビリティと計画的偶発性理論に出会い、まずは自身の歩んできた経験を洗い出しました。
ECサイトのフルリニューアルプロジェクトにアサインされたり、急遽未経験からスクラムマスター任されたり、ベトナムオフショア開発組織のCTOになったり、コロナ禍では会社存亡の危機の中様々な施策を打ったり… 等々ピンチは沢山あったもののチャレンジとチャンスと捉えて必死に目の前のことを愚直にやってきて、今のエンジニアリングマネージャーという役割に繋がっていることに気づきました。

ネガティブ・ケイパビリティの適用

キャリアに関する漠然とした不安は、自身のアウトプットからフィードバックが得られるまでのリードタイムが長くなってきていることに依って成果が見えづらくなっている。ということが直接的な原因であることに気づきました。
エンジニアとしてコードを書いていたときは、書いたコードをすぐ動かしてうまく動くかエラーになるかのフィードバックをすぐに得られたり、pull requestを出してレビューをもらったりと自身の行動に直結するフィードバックを得られるまでのリードタイムがとても短かったのですが、エンジニアリングマネージャーとしてチームや組織に対しての施策に関するフィードバックを得られるまではかなりリードタイムが長くなります。
このリードタイムの中で自分自身が成果を上げられているのか、成長できているのかという不安がキャリアへの不安に繋がっていました。そのためネガティブ・ケイパビリティの考え方で自身の成長もキャリアの不安も宙ぶらりんの状態にしてすぐに答えを出さないようにすれば良い。と手放すことができました。

まとめ

ネガティブ・ケイパビリティを自身に適用しすぐに答えを出さないようにし熟考を続け、 一方で計画的偶発性理論に基づいて、偶然の出来事を積極的に受け入れすべてやり抜き続けることによって、焦らずキャリアが形成されていくと期待できるようになり、キャリアに関する漠然とした不安から解消されました。

これらの理論がすべての人に適用可能であるとは限りませんが、キャリアに関する不安を抱えていらっしゃる方々にとって、何らかの参考になれば幸いです。

最後に

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